エスペラント
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| エスペラント Esperanto [ˌes.peˈran.to] |
|
|---|---|
| 話される国 | 世界中 |
| 地域 | - |
| 話者数 | 母語話者200~2000人、第二言語話者100万人~200万人 |
| 順位 | 100位以内になし |
| 言語系統 | 人工言語(インド・ヨーロッパ語族) エスペラント |
| 公的地位 | |
| 公用語 | 無し 幾つかの国際機関で公用語として使われている |
| 統制機関 | アカデミーオ・デ・エスペラント |
| 言語コード | |
| ISO 639-1 | eo |
| ISO 639-2 | epo |
| ISO/DIS 639-3 | epo |
| SIL | ESP |
| 言語のシンボル | |
|---|---|
| 緑星旗 | ユビレーア・スィムボーロ |
エスペラント(Esperanto)はルドヴィコ・ザメンホフが考案した人工言語である。
目次
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概要
エスペラントを話す者はエスペランティストと呼ばれ、世界中に100万人ぐらい存在すると推定されている。(使用状況を参照)
創案者のルドヴィコ・ザメンホフがこの言語を発表した際、「エスペラント博士(Doktoro Esperanto)」というペンネームを使ったためこの名がある。エスペラントとは「希望する者」という意味である。ザメンホフは当時の帝政ロシア領ポーランドのビアウィストク出身のユダヤ人の眼科医で、1887年7月14日にUnua Libro(最初の本)でこの言語を発表した。
ザメンホフは世界中のあらゆる人が簡単に学ぶことができ、世界中で既に使われている母語に成り代わるというよりはむしろ第2言語としての国際補助語を目指してこの言語をつくった。現在でも彼の理想を追求している使用者もいるが、一方、理想ではなく実用的に他国の人と会話するためや他の国や異文化を学ぶために使っている人もいる。今日異なる言語間でのコミュニケーションのためにこの言語を使用し、旅行、文通、文化交流、ラジオ、インターネットテレビなどで使っている。
日本では、20世紀初頭に二葉亭四迷らが普及に尽力し、2005年現在、約1500人が財団法人日本エスペラント学会の会員である。
歴史
エスペラントは1880年代にルドヴィコ・ザメンホフによって発明された。最初の文法書は1887年に発表された。
言語の開発
最初、ザメンホフはラテン語の復権が言語問題の解決策になると考えていたが、実際にラテン語を学ぶと難しいことに気づいた。英語を学んだ際その文法の簡単さを知り、動詞の人称変化が必要ないことに気づいた。 言語を学習するにはたくさんの単語を覚えなければならないが、街を歩いているとき偶然ロシア語で書かれた二つの看板を見て、解決策を思いついた。 швейцарская(シュヴェイツァールスカヤ 門番所)と、кондитерская(コンディテルスカヤ 菓子屋)という二つの看板には、共通してskaja(スカーヤ 場所)という接尾辞が使われていた。 彼は一つ一つ覚えなければならない単語を、接辞を使って一つの単語から作り出すことを思いついた。語彙は多くの言語で使われているものを採用した。
1878年、現在のエスペラントのプロトタイプといえるLingwe uniwersala(リングヴェ ウニヴェルサーラ)をザメンホフはギムナジウムの同級生たちに教えた。その後6年間、まず各民族語の文学作品の翻訳と詩作に取りかかり、新しい言語の欠陥や運用上の扱いにくさを無くすことにした。ザメンホフは後の1895年にロシアのエスペランティスト、ニコライ・ボロフコに宛てた手紙に「私は6年間を言語を完璧にするために費やした。たとえそれが1878年の段階で既に出来上がっていたとしても」と書いている。彼がもう既に彼の言語を公表できる準備ができていると考えていたが、ロシア政府の検閲がそれを許さなかった。これにより公表が遅れたが、その間彼は聖書やシェークスピアの作品をエスペラントに翻訳し、言語の改良も重ねていった。1887年、Unua Libro(最初の本)でエスペラントの基礎について紹介した。こうして今日話されているエスペラントができた。
最初の世界大会まで
最初の内、エスペラントの話者同士の交流の手段としては文通か雑誌『La Esperantisto』(1889年から1895年まで発行)ぐらいしかなかった。1905年までに、17のエスペラント関係の雑誌が発行された。活動は最初ロシアや東ヨーロッパに限られていたが、後に西ヨーロッパやアメリカ、アジアに広がっていく。
1904年小規模な国際会議が設けられ、それが1905年8月、フランスのブローニュ=シュル=メールで行われる最初の世界エスペラント大会の開催に繋がる。このときは33の国から688人が参加した。大会でザメンホフはエスペラント運動の指導者としての地位を公式に放棄した。ザメンホフ自身がユダヤ人であったため、反ユダヤ主義による偏見が言語の発展を妨げるのを恐れたためである。[要出典]彼はエスペラント運動の原理に基づいたブローニュ宣言を提案し、大会出席者たちはこれを採択した。
言語の発展
1905年にフランスのブローニュで開催された第1回エスペラント大会で、『エスペラントの基礎』の変更を制限する宣言が採択された。宣言は言語の基礎をザメンホフが出版した『エスペラントの基礎』(Fundamento de Esperanto フンダメント デ エスペラント)から変更してはならないとし、いかなる者もこれを変える権利を有しないとした。この宣言は使用者が適当と思うように新しい考えを発表しても良いとしているが、本来の形を奨励している。
しかしながら実際には、現代のエスペラントの使い方は『エスペラントの基礎』で示された「お手本」と完全に一緒というわけではない。例えば「私はこれが好きです。」の一文をエス文に翻訳するときを例に説明する。『エスペラントの基礎』に沿って訳せば、“Mi ŝatas ĉi tiun.”(ミ シャータス チ ティーウン)となるが、これは「私はこれの価値を認める」という意味になる。慣習的には代わりに“Ĉi tiu plaĉas al mi.”(チ ティーウ プラーチャス アル ミ)と訳される。逐語訳すれば「これは私に気に入る」。完全に一緒の意味ではないがこちらの訳の方が「私はこれが好きです。」の意味に近い。
他の慣習的な変化としては、国名を表す接尾辞が-uj-から-i-に変わったことである(例:Japanujo → Japanio)。また、厳密に言えばエスペラント化された単語のうち、-aで終わっている単語は全て形容詞であるが、ヨーロッパの名前でMariaのように-aで終わっている女性の名前もエスペラント化された名詞として現在慣習的に認められている。『エスペラントの基礎』に従えば、エスペラント化された名詞はMarioのように全て-oで終わらなければならない。
加えてエスペランティストたちは、新しく登場した外来語を表すためにさまざまな新語を取り入れた。これらはそのまま使うのではなく、可能な限り造語法など言語の様式に従って取り入れている。例えば、コンピュータ(computer)はkomputilo(コンプティーロ)といった具合である(道具を意味する接尾辞-il-を使っている)。
新語はどんなものでも受け入れられるとは限らない。たとえば「安い」を意味する新語、ĉipa(チーパ・英語のcheapに由来)は、長たらしいmalmultekosta(マルムルテコスタ: mal/multe/kost/a=「(反対)・多く・費用・(形容詞)」)に代わるものとして造られたが、あまり使われていない。
最初の世界大会以降
1905年以降、世界エスペラント大会は2つの世界大戦の間を除き、毎年開催されている。
1920年代、国際連盟の作業語にエスペラントを加えようという動きがあった。日本の新渡戸稲造をはじめ10人の各国代表者が賛同したが、フランスの代表者ガブリエル・アノトーの激しい反対にあい、実現しなかった。フランス語は英語に国際語の地位を脅かされつつあり、エスペラントを新たな脅威とみなしていたからである。
その後、アドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンはエスペラントの反・排外的民族主義性に危険を感じ、エスペランティストたちを粛清した。ヒトラーは『我が闘争』の中で「エスペラントは離散したユダヤ人を結集させる国際語だ」とし、スターリンは「エスペラントはスパイの言語だ」と明言した。
年表
- 1859年:エスペラントの草案者ルドヴィコ・ザメンホフがポーランドに生まれる。
- 1887年:最初の文法書が出版される。
- 1905年:第1回世界エスペラント大会がフランスのブローニュ=シュル=メールで行われ、『エスペラントの基礎』が出版される。
- 1908年:当時19才のエスペランティスト、ヘクター・ホドラーが中心となって世界エスペラント協会(UEA)が設立される。
- 1966年:パスポルタ・セルヴォ(エスペランティストの国際ホームステイシステム)が始まる。
- 2001年:エスペラント版ウィキペディアが発足。現在エスペラント界で最も人気のあるウェブサイトの一つである。
分類
エスペラントは人工言語であるため、公式にはどの自然言語とも親戚関係にないとされている。どの国の言語でもないため言語による民族感情に左右されず、特定の民族に有利になったり不利になったりしないため、だれでも使用の恩恵を受けられるとされている。しかし実際には文法、語彙ともにヨーロッパの諸語、とりわけロマンス語を基礎に成立しているため既存の語族に分類した場合エスペラントは印欧語族に分類されるのは明白である。そのため非ヨーロッパ言語の話者には習得や運用が難しいという日本を含む非ヨーロッパのエスペランティストからの指摘もある(とはいえ、「完全に中立な」言語はどの自然言語からも遠く、「誰にとっても難しい」悪平等の典型のような言語になってしまうため、ある程度の不平等性はやむを得ないとする現実的意見も多い)。発音体系はスラブ語の影響を受けているが、語彙は主にロマンス語(フランス語・スペイン語等; 約75%)、ゲルマン語(ドイツ語・英語等; 約20%)から採用している。ザメンホフが定義していない文法上の語用論や相については、初期の使用者の母語、すなわちロシア語・ポーランド語・ドイツ語・フランス語の影響を受けている。
ラテン語・ギリシア語と同様、比較的語順は自由であるが、慣習上、圧倒的に英語と同じようなSVO文型が多く、形容詞が名詞の前に来ることが多い。前置詞を使用し、屈折語的性質を持つが、活用や格変化は語幹に形態素を付着させることによって行われるので、膠着語的性質も強い。
使用状況
エスペラントの使用者人数調査は、ワシントン大学の心理学教授シドニー・S・カルバートによって行われた。彼自身エスペラント大会に出席したことがあるエスペランティストであった。カルバートは160万人の人々がエスペラントを "Foreign Service Level 3" の能力で使いこなすことができると結論づけた。これは「専門的で堪能な」(エスペラントで挨拶と簡単な表現ができることにとどまらず、実際に意思伝達ができる能力を有する)人々に限定した数字である。この調査はエスペラント使用者を探し出すものではなく、多くの言語の世界的な調査の一部分が元になっている。この数字は Almanac World Book of Facts と Ethnologue にも登場した。この数字は世界人口の大体 0.03 % に相当する。この数字では、ザメンホフが目指した普遍語には程遠い。Ethnologue はこのほかエスペラントを母語として育った、生まれながらのエスペラント使用者が 200 から 2000 人いると言及した。
カルバートは研究の結果だけ公表し、調査方法の詳しい点については明らかにしなかった。それゆえ、彼の研究の正確性は疑われている。ドイツのエスペランティスト、ズィーコ・ヴァン・ディーク(Ziko_van_Dijk)はこの数字を疑い、調査して『神話なしのエスペラント(Esperanto sen mitoj)』の中でその結果を発表した。「もし、100 万人のエスペラント話者が世界中に平均的に散らばっているとしたら、ケルンには 182 人いることになる」と予想した。ズィコゼックは 30 人しか流暢に話す人を見つけることができなかった。そして、この数字は世界の平均的な地方よりも高い方である、と言及した。彼はまた、「さまざまなエスペラントの組織の登録者数が 20,000 人おり、組織に登録されていないエスペランティストもたくさんいるだろうが、登録されている人の 50 倍もいるとは考えにくい」ということも言及した。他のエスペランティストたちも組織の登録者数と非登録者数がそんな比率で存在しないと考えている。カルバート教授のデータ、あるいはその他のデータもエスペランティストの人口を確実にはじき出すことは不可能である。
公的地位
エスペラントを公用語としている国は無いが、20世紀の初めモレネの公用語をエスペラントにする案が提案された。アドリア海の人工島、ローズ島に短命ながら存在したミニ国家は1968年にエスペラントを公用語として採用した。非政府組織、特にエスペラント関係団体などでは作業語として使われている。最も大きいエスペラントの組織、世界エスペラント協会は、非政府組織の一つとして国連とユネスコと協力関係にある。
派生言語
『エスペラントの基礎』はエスペラントを改造することを認めていない。しかしながら、年月がたつにしたがってたくさんの団体・個人がエスペラントを「改善」することを掲げて、エスペラントの改造を提案した。改造案のほとんどは失敗か計画段階にとどまったが、唯一1907年にパリで行われた国際語選定代表者会で発表されたルイ・ド・ボーフロンによるイド改造案はある程度の支持者を得た。イドの主な改造はアルファベットと幾つかの文法事項の変更であった。初期には比較的多くの人がイド改造案に賛同したが、この運動は改造に次ぐ改造を呼び次第に分解した。今なお、250 から 5000 人がイド語を使用しているとされるが、使用人口・影響力ともエスペラントとは比較にならず、これもまた「成功した」とは言い難い。
アルファベット
- 詳細はエスペラントアルファベットを参照
エスペラントのアルファベットはalfabeto(アルファベート)と呼ばれ、ラテン文字アルファベットにサーカムフレックス付きアルファベットĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝとブレーヴェ付きアルファベットŭを加えた28文字を使用する。q, w, x, y は人名など特殊な場合を除いて使用しない。各字母の名称は、母音字はその発音、子音字はその子音に-oをつけて発音する(a アー、b ボー、c ツォー、ĉ チョーなど)。
| エスペラントアルファベット | |||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | B | C | Ĉ | D | E | F | G | Ĝ | H | Ĥ | I | J | Ĵ | K | L | M | N | O | P | R | S | Ŝ | T | U | Ŭ | V | Z |
| a | b | c | ĉ | d | e | f | g | ĝ | h | ĥ | i | j | ĵ | k | l | m | n | o | p | r | s | ŝ | t | u | ŭ | v | z |
代用表記
英文タイプライターなどでダイアクリティカルマークが付いた文字が表示できないとき、別の文字に置き換えてダイアクリティカルマーク付き文字を表現することを代用表記(Surogata skribosistemo)と呼ぶ。h,xあるいは^などを文字の後ろ(あるいは前)に加え、ダイアクリティカルマーク付き文字であることを示す方式が主流だが、ŭをwに置き換えるなど、エスペラントで使用しない文字に置き換える方法もある。何を後置するかによって、H-方式、X-方式のように呼ぶ。現在はUnicodeが普及したことにより、コンピュータの上では代用表記の使用は少なくなっている。
H-方式
H-方式(H-sistemo)またはザメンホフ方式(Zamenhofa sistemo)はhを後置する方法で、唯一『エスペラントの基礎』で定義されている方法である。そのため「第2の正書法」とも呼ばれる。uにだけは後置しない。flughaveno(空港)のように代用表記に見える綴りがあると紛らわしいという欠点がある。エスペラントで使用する文字を使用するこの方式が採用されたのは、活字の数を増やしたくなかったためと言われている。
X-方式
X-方式(X-sistemo)はxを後置する方法である。xはエスペラントでは使用しないため(エスペラント文に限れば)置き換えるのが簡単であるという利点から、インターネットなどで広く使われている。ただし、フランス語の人名や名詞・形容詞(特に複数形)には(e)aux または ouxで終わるものがあるため、このような置き換えたくない文字の処理をどうするかが問題になる。この問題を避けるため、ŭをuxと書かずにvxと書く方法があるが、あまり広まっていない。
エスペラント版ウィキペディア・ウィキショナリーの代用表記
エスペラント版のウィキペディア、ウィクショナリーには、X-方式が使われていて、cxをĉ、gxをĝと、xが付いた文字を自動的に字上符付きのものに置きかえる機能がついている。置き換えたくないとき、編集ページでuxxと入力すれば本文中でuxと表示される。ただしこれは見た目のみで、たとえば [[eauxx]] (「水」の複数形)と入力すると eaux のように表示はされるがリンク先は "eaŭ" であり、"eaux"という記事名で新しい記事を作ることができなかった。参考として:eo:Ningxiaは、ページを移動させて強制的に"Ninjxao"(寧夏回族自治区)という記事名で作ったもの。現在はこのような不備が解消され、uxx が ux でリンクもされるようになった。
キャレット方式
^-方式(^-sistemo)は^(キャレット)を後置する方法である。キャレットがサーカムフレックスと同じ形であることから、初心者やエスペラントを知らない人でも容易に理解できる利点がある。この方式の欠点として、見苦しいと見なされてしまうことが挙げられる。
TeXの代用表記
TeXでエスペラントを記述する場合にはH-方式もX-方式も使いにくいと言うことで、babelパッケージでは独自の方式を使うことになっている。この方式では字上符が付くべき文字の直前に^(サーカムフレックス)を置いて表す。この方式とX-方式はsedやawkなどの簡単なスクリプトで相互に変換することができる。
Unicode
かつてコンピュータがダイアクリティカルマーク付き文字を扱えなかったころは、エスペラントを何らかの代用表記で表すしかなかったが、現在はISO 8859-3(いわゆるLatin-3)やUnicodeの普及により、コンピュータ上でもエスペラントのダイアクリティカルマーク付き文字を表示できるようになった。以下はHTMLなどで表示する場合の実体参照である。
- Ĉ: Ĉ
- ĉ: ĉ
- Ĝ: Ĝ
- ĝ: ĝ
- Ĥ: Ĥ
- ĥ: ĥ
- Ĵ: Ĵ
- ĵ: ĵ
- Ŝ: Ŝ
- ŝ: ŝ
- Ŭ: Ŭ
- ŭ: ŭ
アクセント
「アクセントは常に最後から2番目の音節にある。」(エスペラントの基礎、文法第10条)
エスペラントのアクセント(強勢)はakcento(アクツェント)と呼ばれ、日本語の高低アクセントではなく、英語と同じ強弱アクセントである。英語では同音でアクセント位置によって意味が異なってしまうdesert(砂漠)とdessert(デザート)を、エスペラントではdezertoとdesertoのように音を変えて取り入れている。この例は、フランス語の音(それぞれ /dezEr/, /desEr/)から、またはその中間形を、取り入れたとも考えられる。アクセントの位置によって単語を区別する必要がないため、人によって高低アクセントになってしまったり、あまり注意が払われない場合もある。
綺麗に発音するためドイツ語と同じように、アクセントに長短の区別をつけるのが推奨されている。最後と最後から2番目の母音の間に子音が2個以上あるときはアクセントのある母音を短く発音し、子音が無いか1個だけのときは長く発音する。これに加えて、最後と最後から2番目の母音の間の複子音の第二要素が l, r のものと kv , dz である場合はアクセントを長く発音するというものもある。
また、特に詩などで、語末の母音を省略することがあるが、その場合でもアクセント位置は変わらない。
単語
最初のエスペラントの語彙は、1887年にザメンホフが出版したLingvo internaciaの中で定義されている。初期には900語定義された。しかしながら、言語の使用者は必要に応じて多くの言語で国際的に最も使われている単語を取り入れて使うことが、文法規則(エスペラントの基礎、文法第15条)によって許されている。1894年、ザメンホフは最初の5カ国語(仏・英・独・露・ポーランド)のエスペラント辞書Universala Vortaroを発表した。そのときから特に西ヨーロッパの言語から多くの外来語がエスペラントに取り入れられた。より多数の使用者が取り入れた単語が人気を得て広まっていった。近年では、新しい外来語や造語のほとんどは技術用語または科学的な用語である。日常的な用語は既にある単語から合成して造られるか(例: komputilo)、あるいは既存の単語に新しい意味を追加して使う傾向にある(例:muso: 鼠、はコンピュータの入力装置の意味も持つようになった)。
新しい外来語を取り入れるか、それとも既存の単語から新しい単語を合成したり、既存の単語に新しい意味を加えたりして対応する方が良いのか、この種の議論には限りが無い。エスペラントを学ぶ人は基本単語に加えて、単語が結合する規則なども覚えなければならない(例:eldonejoはそのまま訳すと"出す所"で、それは「出版社」や「発行所」を意味する)。
すべてのエスペランティストが新しい単語を創り出す権利を持っているので、造語法を学ぶことは非常に重要である。新しい単語はエスペラントのコミュニティで使われていく中で次第に淘汰され、ほとんどの場合、最終的に一つの形に落ち着くことになる。例えば「コンピュータ」に相当する語は最初、komputero、komputmaŝino、komputilo、komputatoroなどいろいろな形が使われたが、最終的にkomputiloに落ち着いた。しかし「データ」を表すdatenoとdatumoなど、複数の形が併存している例も見られる。
幾つかの単語はそのままの意味の他に慣習的な意味を持つものがある。例えば、ワニを意味する"krokodilo"から派生した"krokodili"と言う動詞は、「エスペラントを話さなければならないところで自国語を話すこと」という意味がある。
最大のエスペラント辞典はLa Nova Plena Ilustrita Vortaro de Esperanto(SAT, 2002, ISBN 2-9502432-5-8)であり、16,780個の語根と46,890個の複合語句が記載されている。2005年、最新の改訂版が出版された。これは英語などの辞書と比べると非常に少ないように思えるが、実際にはエスペラントの造語法に従って自由に複合語をつくることができるので、実際に世界で使われている語彙は数十倍にのぼると考えられる。
文法
概要
エスペラントは文法上の性を持たず、規則動詞変化をする膠着語である。名詞と形容詞は主格と対格の2つの格を持つ。数には単数(singularo)と複数(pluralo)があり、形容詞にも複数形がある。動詞は人称変化しない。対格語尾は移動の目標を表したり、任意で適当な前置詞の代わりもする。対格があるので、ロシア語、ギリシア語、ラテン語あるいは日本語のように語順は比較的自由である。
冠詞
「不定冠詞は無い。全ての性、数、格に関係ない定冠詞laがある。」(エスペラントの基礎、文法第1条)
品詞語尾
エスペラントでは全ての名詞、形容詞、動詞と、形容詞等からの派生副詞は、語幹(radiko)とその単語の品詞をあらわす品詞語尾(finaĵo)の組み合わせによって構成される。例えば、vorto(単語)はvort-という語幹と名詞を表す語尾-oから成り立っている。品詞語尾によって単語の品詞がわかり、また品詞語尾を換えることにより品詞を変化させることが出来る。
品詞語尾-oは名詞(substantivo)、-aは形容詞(adjektivo)、-eは副詞(adverbo)をそれぞれ表す。名詞あるいは形容詞の品詞語尾の後ろに-jを加えると複数形になる。対格にするには-nを名詞あるいは形容詞語尾の後ろにつけ、複数形の場合は複数形語尾の後ろにつける。動詞には6つの品詞語尾がある。
形容詞は名詞の数と格に一致させる。すなわち修飾する名詞が複数形の場合は形容詞も複数形にし、対格の場合は形容詞も対格にする。bona(良い)、tago(日)を例に一致の変化を示す。
| 主格 | 対格 | |
|---|---|---|
| 単数 | bona tago | bonan tagon |
| 複数 | bonaj tagoj | bonajn tagojn |
形容詞の数と格を一致のため、語順がかなり自由となって形容詞-名詞、名詞-形容詞のどちらも可能になり、標準的なSVO型の他、SOV型やVSO型などの文も作ることが出来る。初心者はこれを忘れることが多い。
- la knabino feliĉan knabon kisis. (その少女は幸せな少年にキスした)
- la knabino feliĉa knabon kisis. (その幸せな少女は少年にキスした)
一つ以上の単数形の名詞を修飾する形容詞は複数形にする。
- ruĝaj domo kaj aŭto. (赤い家と赤い車)
- ruĝa domo kaj aŭto. (赤い家と車)
叙述的な形容詞は対格としない。
- mi farbis la pordon ruĝan. (私は赤色のドアを塗った)
- mi farbis la pordon ruĝa. (私はドアを赤色に塗った)
人称代名詞
()内は同義の英語
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | mi - 私 ( I ) | ni - 私たち(we) |
| 2人称 | vi - 君 (you) | |
| 3人称 | ŝi - 彼女 (she) li - 彼 (he) |
|
| 4人称 | ĝi - それ(it) | |
| 5人称 | ili - 彼等/彼女等(they) | |
| 6人称 | si - 自身(self,own ;独語 sich)、 | |
| 7人称 | oni - 人々(one,people ;仏語 on) |
対格にするには-nをつける。「私を」はminとなる。所有格(所有形容詞、属格)にするには形容詞語尾-aをつける。「私の」はmiaとなる。所有形容詞は形容詞の一種なので、普通の形容詞と同じように複数語尾や対格語尾の変化があり、miajn librojn 「私の本(複数)を」のように、名詞の数と格に一致させる必要がある。
※他に「お前(thou)」に当たる2人称単数親称ciがあるが、実際にはほとんど使われていない。性区別を無くすため、li とŝi に代わる3人称代名詞 ri - その人(s/he)を使う運動(riismo)があるが、それほど普及していない。
動詞
| 不定形 | -i(lerni) |
| 現在形 | -as(lernas) |
| 過去形 | -is(lernis) |
| 未来形 | -os(lernos) |
| 仮定形 | -us(lernus) |
| 命令形 | -u(lernu) |
動詞は(verbo)平叙文での動詞の位置は原則として文の構成要素の内、2番目に置かれるがかなり自由である。エスペラントには助動詞(helpverbo)の概念が明確でない。povi,devi,voliなどは下に示すように西欧語などでの助動詞と同じ用法を持っているが、他の動詞と活用上区別されることはない。同様に存在動詞も活用上の区別がない。自動詞、他動詞の区別は厳格である。時制の一致はない。不規則動詞が無く、世界一不規則動詞が少ない言語として、ギネスブックに登録されている。エスペラントの動詞は人称によって変化しない。例としてlerni(学ぶ)を使って変化を示す。
法
エスペラントには4つの法が存在する。
直説法
直説法(deklara modo, reala modo)の時制は現在、過去、未来があり、それぞれの動詞の語尾は-as, -is, -osである。現実の動作と状態を表現する。継続中の動作は分詞形容詞を使った複合時制を使う方法もあるが、単純時制を使う方が一般的である。
- Mi estas studento. (私は学生です)
- Ŝi nun legas la libron. (彼女は今、本を読んでいます)
- Li ĵus finis la laboron. (彼はたった今仕事を終えました)
不定法
不定法(不定詞、neŭtra modo, infinitivo)の動詞の語尾は -iである。辞書に載っている形である。動詞句をつくることが出来るが、他の動詞のように主文をつくることができない。
エスペラントの不定詞は時制によって変化しないが、イド語の不定詞には現在、過去、未来の変化がある。
不定詞の名詞的用法
不定詞の名詞的用法(infinitivo kiel subjekto 主語としての不定詞)は不定詞を名詞のように扱うことである。主語、目的語、補語の役割を果たす。名詞の補語は形容詞であるが、不定詞の補語は副詞である。
- Paroli estas facile, fari estas malfacile. (言うのは易しい、やるのは難しい)
複合動詞
動詞devi, deziri, rajti, poviなどの後に動詞の不定詞を置くことで複合動詞(kompleksa verbo)のようにすることができる。英語での助動詞と不定詞の関係に同じ。
- Mi povas paroli vian lingvon. (私はあなたの言葉を話すことができます)
- Vi volos reveni. (あなたは帰りたいと思うだろう)
- Li devis maldungi ilin. (彼は彼らを解雇しなければならなかった)
仮定法
仮定法(kondiĉa modo, imaga modo)の語尾は-usである。
- 事実とは逆の仮定
- Se mi estus birdo, mi povus flugi en la ĉielon.「もし私が鳥ならば、空に向かって飛んで行けるのだが。」
単純な仮定法では時制はないが、厳格に現在、過去、未来の時制を表したい場合は複合時制を使う方法がある。
命令法
命令法(ordona modo)の動詞の語尾は-uである。命令だけでなく依頼、要求、禁止などの「意思」を表現するため、意思法(vola modo)とも呼ばれる。命令文で主語がviのとき、特に強調する場合を除き、主語viは省略される。
- Iru! 「行け!」(主語viは省略)
- Vi iru! 「君が行け!」(省略せず、viを強調。他の誰でもなく「君が」行け)
- Ni iru! 「行こう!」
- Mi petis, ke li savu min. (私は彼に助けてと頼んだ)
- Ĉu ni iru al la kinejo? (映画に行きませんか?)
コピュラ
動詞esti は、ラテン語のsum, esse, fui、フランス語の être、イタリア語の essere、英語の beなどに相当するものである。日本語では「ある」と訳されることもある。 非常に重要な動詞で存在を表現したり、コピュラ文の他、分詞形容詞を伴って複合時制の文を作ることが出来る。for-est-i, est-ont-aのようにesti自体に接辞を付ける事ができる。コピュラは2つの名詞句をつなぐ。
表現
あいさつ
- "Saluton !"(サルトン!)= やあ。
- "Tre agrable !"(トレ・アグラブレ !)= はじめまして。
- "Bonan matenon !"(ボナン・マテノン !)= おはよう。
- "Bonan tagon !"(ボナン・タゴン !)= こんにちは。
- "Bonan vesperon !"(ボナン・ヴェスペロン!)= こんばんは。
- "Dankon !"(ダンコン!)= ありがとう。
- "Ĝis revido !"(ヂス・レヴィド!)= さようなら
文
- "Mi estas tre ĝoja konatiĝi kun vi."(ミ・エスタス・トレ・ヂョヤ・コナティヂ・クン・ヴィ.)= あなたと知り合いになれてとてもうれしいです。
- "Mia nomo estas ~."(ミア・ノモ・エスタス ~.)= 私の名前は~です。
- "Mi estas japana."(ミ・エスタス・ヤパナ.)= 私は日本人です。
- "Kiel vi fartas ?"(キエル・ヴィ・ファルタス ?)= お元気ですか ?
日本語由来のエスペラント単語
- animeo アニメオ (アニメ) 日本のアニメ、日本式の画風のものをいう。国を限定しないならanimacio
- aikido アイキド (合気道)
- cunamo ツナモ (津波) 学術用語としての「気象以外の要因による波」だけでなく、単なる大波(ondego)として使われたり、「押し寄せるもの」の例えに使う場合もある。
- ĉanojo チャノヨ (茶の湯 → 茶道) Japana teceremonioと言う方が多い。
- ĉirimeno チリメノ (縮緬)
- eno エノ (円)
- goo ゴオ (碁)
- hajko ハイコ (俳句)
- harakirio ハラキリオ (腹切り → 切腹)
- haŝioj ハシオイ (箸) かつて用いられたが、箸は日本以外でも使用されるため、文化を限定しない単語としてmanĝobastonetoj マンヂョバストネートイ (「食事」+「小さな棒」の複数形)が造られた。
- hibakŝo ヒバクショ (被爆者)
- ĵudo ジュード (柔道)
- kamikazo カミカゾ (神風) 神風特別攻撃隊の略称「神風」が転じて「自爆テロ」も指す。
- kapao カパオ (河童)
- karaokeo カラオケオ (カラオケ)
- karateo カラテオ (空手)
- katano カタノ (刀 → 日本刀)
- kimono キモノ (着物)
- mangao マンガオ (漫画) 日本風の漫画(Japana bildliteraturo)に限定して使用する。日本のアニメを含む場合もある。国を限定しない漫画はbildliteraturoを使用する。アメリカ風ならkomiksoがある。
- noo ノオ (能)
- origamio オリガミオ (折り紙)
- sakeo サケオ (酒 → 日本酒)
- samurajo サムラヨ (侍)
- ŝintoo シントオ (神道)
- ŝogio ショギオ (将棋) Japana ŝako「日本チェス」という言い方もある。
- ŝoguno ショグノ (将軍)
- suŝio スシオ (寿司)
- tankao タンカオ (短歌)
- tofuo トフオ (豆腐)表記ゆれとして、トウフーオなどがある。また、sojkazeo(「大豆」+「凝乳」)という言い方もある。日本語由来ではなく、中国語由来であるとした文献も多い。もちろん、両方の言語から取り入れられたという見方も出来る。
- udonoj ウドノイ (うどん)
- utao ウタオ (歌 → 和歌)
- zorioj ゾリオイ (草履)
- bonsajo ボンサヨ (盆栽)
その他
- ヤクルト(Yakult)という商品名は、エスペラントで「ヨーグルト」を意味する jahurto(ヤフルト)に由来している。
- ソニーが開発した非接触型ICカードの技術方式であるFeliCaは、エスペラントで「幸福」を意味するfelica(フェリカ)に由来しているという噂があるが、誤りである。実際は英語のfelicity(至福)より(公式サイトから)。なお、エスペラントで「幸福な」は feliĉa(フェリーチャ)。
- 複合商業施設、丸の内オアゾの名前の由来はエスペラントで「オアシス」を意味するoazo(オアーゾ)である。
関連項目
- エスペラントアルファベット
- エスペラント版ウィキペディア
- エスペラント文学
- エスペラント母語話者
- エスペラントの基礎
- プラ-エスペラント
- ブローニュ宣言
- 緑星旗
- 緑の星
- ラ・エスペーロ
- 釜石線
- 八ヶ岳エスペラント館
外部リンク
学習
- lernu!
- Kurso de Esperanto エスペラント自習ソフト
- 簡易日エス辞書、 簡易エス日辞書
- Hejmpagxo de Vastalto エスペラント電子辞書など
- Reta Vortaro エスエス辞典
- ネットワーカーに贈るエスペラント語入門講座
- 英語から入るエスペラント
- エスペラント普及会(大本系の学習指導会)
- Diskutgrupo "Ni parolas Esperante"
- "鍋田辞書 エスペラント対応のパソコン用辞書ソフト"
情報
- esperanto.net
- Ĝangalo ニュースサイト たまにウィキペディアのことも紹介される。
組織
- 日本エスペラント学会
- 東京エスペラントクラブ
- 関西エスペラント連盟
- 世界エスペラント協会(エスペラント、英語、仏語、独語、西語、ポルトガル語、ロシア語)
- エスペラント学士院(エスペラント)
入力ツール
- Vastalto のエスペラントの部屋:エスペラント語キーボードレイアウト (手軽にエスペラントを入力できる)
- エスペラント語キーボードレイアウト (英字キーボード用)
- エスペラントIME
カテゴリ: 出典を必要とする記事 | 人工言語 | エスペラント | インド・ヨーロッパ語族
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